この仕事は、気付かないくらいじわじわ「日常風景」を変える仕事なのかもしれない


3月8日が国際女性デーということで、それっぽい話をします。

少し前のニュースになりますが、
ナイキとローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団と共に、
大坂なおみ選手が『プレー・アカデミー』を設立しています。

これは、男の子と同様、スポーツにおいて
女の子にも公平な機会を与えられるように
との思いから始まったものです。

同プロジェクトのサイトから引用します。

【課題】────────
男の子の約2倍の女の子たちが、14歳までにはスポーツをやめている

・6~15歳の女子のスポーツ参加率は男子よりも20%低く、
 10歳でスポーツをやめた女子は、その後の生涯で再びスポーツを再開することはほぼ無い
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【原因】────────
・自分が運動に興味を持つに十分な、多様な機会や選択肢を得られない

・社会に根強く残る女性への固定概念によって、
 10代の女の子の30%がスポーツ界の女性に対してネガティブなイメージを持っている

・意図せず間接的であっても、女の子はしばしばコーチから性差別を受け、自信を失うことがある

日本の男性コーチの数が72%であるのに対し、女性コーチは28%
 女の子たちは自分の将来の可能性を可視化することができにくい

・女の子が経験する思春期、身体の変化、社会的プレッシャーは男の子とは異なる
 多くのコーチやスタッフ間で、これらに関わる知識と理解の不足が見られ、
 女の子が必要とするサポートが得られていない
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なるほど。

私はほぼ毎週末バスケをしています。
(決して運動能力自体もバスケのスキルも高い方ではないのですが、
 スポーツをする時間はフィジカル・メンタル両面に不可欠で、
 本当に自分にとって無いと支障が出てしまうくらい重要な時間なのです。)

たまに、様々なコミュニティの人たちが集まり、合同で練習試合をする機会があります。

その時にいつも不思議で、言葉を選ばずに言うと、
「なんかちょっと違和感あるし、あんまり好きじゃないな…」と思う光景が目に入るのです。

カップルや夫婦で参加していたプレーヤー、お子さんが生まれると、
100%、彼は変わらずプレーを続けて、お母さんになった彼女は、
コートの外で、着替えずに、ずっと子どもの世話をし、試合を眺めているのです。

私が見た限りだから日本中の人がそういうわけではないと思うけれど、
逆は一度も、1カップルも見たことがないなぁと思い返すのです。
たとえ、産前は奥さんの方がアグレッシブなプレーヤーであっても。

出産や育児を経て、彼女は子どものケアをする方が好きになったのかもしれないし、
体力的にスポーツに割きたくないのかもしれないので、
その個人の選択肢は当然尊重されるべきもので、その様子をみて、
「好きじゃないな」なんて思うのは、私自身の身勝手な解釈ではあります。

でもやっぱり変な感じがして、どうも飲み込むことが出来ないのです。
コートの外でお母さんに抱っこされながら、
その様子を見ていた小さな娘さんは、幼い男の子は、
「女の人は大きくなったらそうするものだ」という風に
無意識に思っちゃうんじゃないだろうかと、どうしても考えてしまう。

女性がスポーツに参加しないことが、私に、あるいは社会に、
どういうデメリットをもたらすのか、実はあまりうまく想像できていません。
ということは、超極論でいうと、「どうでもいい」ことなのです。

ただ、めっちゃ極端に言うと、「出産するならもう週末にスポーツは
できなくてもしょうがないという覚悟を女性『は』しなきゃいけない」というか…
出産かレクリエーションか、あるいは出産か仕事か、みたいな
どちらかの2択を迫られる(迫られざるを得ない)苦痛は、
コートの外の見慣れたごくごく当たり前の日常風景から出来ているのかもしれない
どうしても感じてしまう自分がいます。

自分が小学生の頃は、まだ、職員室も電車の中も病院の待合室も、
どこもかしこも逃れようがないくらいタバコの煙だらけだったような気がします(昭和生まれ)。

でもいつの間にか、「常識」って変わってた気がしませんか?

PRの仕事というのは、一見、祭りのように、瞬間風速的な奇抜な光景を作り、耳目を集め
話題の波を作るものだと思われがちです。(あ、そういう仕事も割と嫌いではないです)

けれども、気付かないくらいじわじわと、長い長い時間をかけて、
風景を変える仕事でもあるのかもしれない
と思うことがあります。
人の意識が変わるかどうかって、
「目が慣れるかどうか次第」みたいなとこってあるように思うんです。

どういう風景を作りたいか。
そういうことも考えながら、けっこう企画を考えていたりします。

風景を変えようとすることは、100%正しいわけではないと思います。
大なり小なり情報を発信することには加害性が伴います。
(タバコの話だって、多くの人の健康は守られたけれど、
 愛煙家は肩身が狭くなっただろうし、
 映画やドラマの演出にもきっと制限が掛かったことでしょう)

けれど、女性もコートの中に入ってボールを追ったり、
男性も私服のまま子どもを抱っこしてそれを見守ったり、
そういう光景「も」見られるようになったらいいなーと思っています。

2020年の全米オープンで、大坂なおみ選手は
大会を通じて黒人への人種差別・暴力に抗議するメッセージを発信していました。
それについてコメントを求められたスポンサーの1社であるヨネックスの、
「スポーツがどうあるべきと捉えているか」に触れた芯の通ったコメントが印象的でした。

“スポーツに国境や人種差別はあってはならず、わたしたちは
世界中のスポーツをするすべての方に楽しんでいただきたいという
願いの中で企業活動を行っています。

大坂選手の行動はわたしたちの基本姿勢と通ずるものであると考えており、
当社はその行動を尊重します。”

ハフポスト大坂なおみが語った「スポンサー企業失う恐怖」 企業側はどう答えた?【14社調査】より

 ◇ ◇ ◇

ジェンダーの話って難しい。難しいというか、こういう話を切り出すのって、ちょっと怖い。
この記事のような個人の見た風景を軸に展開するのでなく、
統計データで客観的に示し、論拠を完璧に固めたうえで、話し始めない限り
言っちゃいけない空気がある。ように思う。
なので避けてきたのだけど、ずっと気になっていたことを
たまには書いてもいいかなぁと思って、びびりながらも書いてみました。

(書き手:森下)


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