「ほしいものが、ほしいわ。」って名コピー過ぎると思う


これまでに見た中で、私が一番好きな広告コピーは、
「ほしいものが、ほしいわ。」です。圧倒的に好きです。

ご存じの方も多いかと思いますが、このコピーは、
糸井重里さんの手による、1988年の西武百貨店のポスターのためのものです。

1988年というと、私は当時5歳だったはずなので、
リアルタイムで知っているわけではないのですが、
もう少し長じたのち、『広告批評』か何かで、
テキストだけでこのコピーを見たとき、心底すごいと思いました。

「あのコスメブランドのクリスマスコフレを買いたい!」といった具合に、
自分が既に欲しいと思っているものが欲しいという解釈に加えて、
あてどなく百貨店やファッションビルに入ったときに感じる、
「『○○がすごく欲しい』という高ぶりを感じられるような
何かがないかしら」という気分。

こんなにシンプルなトートロジーなのに、
”あの感じ”に言葉を与えることで、
「あ、そうそう。私、そう思ってたわ」と自分の感情がくっきりさせられる。
それをこんな少ない文字数で、ダブルミーニングにしてあるなんて、
すごすぎる…と、ひれ伏すような思いでした。

 

いまの自分たちの生活を考えると、
『ほしいもの』は、物理的な質量のある”商品”とは限らず、
それが”情報”である場合もあります。

しかし、この記事では、シンプルに、
「モノを買う」ことを主として話します。

サンプルとして、最近私が買ったモノの、
購入に至るまでの経緯・過程を、順を追って書いてみます。

最近、心底欲しいと熱望して手に入れた商品のひとつに、
『自分好みに塗装されたAirPods』が挙げられます。

▶AirPods

便利なAirPodsですが、購入する前、
”耳からうどんが出ている”状態なのがどうも気に入りきれず、
色々と方法を探ったのです。

▶ワイヤレスイヤホンを装着した、フリー素材モデルとしてお馴染みの大川竜弥さん
(耳からうどん、がわからない方はこちら!)

調べると、海外では、単色でカラーリングしたiPhoneを販売しており、
そこから色付きAirPodsを購入しようかと考えたのですが、
ドル円レートや関税、シッピングにかかる費用を計算してみると、
国内で正規品を購入する値段より大幅に上がってしまうことがわかり断念。

▶ColorWare


それを受けて、国内で真っ白いAirPodsを買ったはいいものの、
やはり耳うどんなのが気になってしまい妥協できず、
次に、「スキンシール」を貼る方法を考えました。

ただ、「シールか…」とテンションが上がりきらず、また、
レビューを見ると、『ドライヤーで伸ばしながら貼ると上手くいった』など、
先人たちの試行錯誤が見て取れて、不器用過ぎる自分には荷が重いと断念。

 


次に試したのが、instagramの「#airpodscustom」でヒットするポストの中から、
日本語コメントがついているものを探しまくる方法。その結果、
イラストも描けてデザインもできて塗装業を手掛けるペインターさんが、
AirPodsに塗装をした実績があるということが分かったのです。

▶DAPPO! EXPERIENCEさんのWORKSの例

 


しかし、ここで気になったのが、
この人にお願いして大丈夫なのか…!?ということ。
大手ECモールの出店者なら、
レビューを見ればある程度、信頼性は判断できます。
今回はそれに当てはまらなかったため、
facebookでお店のアカウントや、代表の方のアカウントをチェック。
さまざまなイベントにも出店していて、
各ポストにはたくさんコメントもついており、
お仕事相手の方々からは信頼されていることがわかります。

 


安心したので、さっそく、公開LINEで連絡を取り、
やりとりを開始し、ほどなく、自分の希望の
AirPodsを手に入れることが出来ました。

▶DAPPO! EXPERIENCEさんとのやり取り

我ながら、「そこまでしてそれが欲しい」という
物欲がなせる業だなと思います。
そして、こうしてみると、ずいぶん複雑に、
時間的コストをかけて、複数の情報源に触れ、
モノを購入していると気づきます。

 

注意喚起が半年前、関心を持ったのが2か月前、
検索をしたのが1.5か月前、購入が1か月以上前。
といえばシンプルですが、その間あいだで、
AirPods自体の使用感を知人から直接聞くなど、
もっと多くの大小様々な「評判」を探し、接触しています。

 

「ほしいものが、ほしいわ。」
このコピーには、ダブルミーニングで解釈することができると、冒頭で述べました。

ひとつが、
「○○がすごく欲しい」という高ぶりを感じられるような状態でいたい、という意味。

ふたつめが、
自分が既に欲しいと思っているものに、完全に合致する商品が欲しいという意味。

 

自分が既に「欲しい」と自覚をしている商品に
見合うものを見つけて買うまでには、
「解決策の選択肢を知りたい」であったり、
「信頼できるかどうか」であったり、それぞれの目的を持って、
マスメディア、SNS、ECや店頭、様々な情報に触れ、
厳しい”選考”をしています。

 

また、そもそも、「これが欲しい」という欲求を抱くきっかけとして、
自分でもまだ気づいていない
(あるいは自覚していても、そのまま放っておいている)
不便を解消する方法が提示されるという経験が必要なのではないかと思います。

『流行ってるからワイドパンツを買ってみたけど、
合わせるトップスがないから、出番少なめだな』という人に、
しっくりくるコーデを提案する。
『うちのexcelで作ってる顧客リスト、
社名や住所、全角と半角が混在してて、DMを送る時の
宛名印刷でうまくいかないことが結構あるな』という人に、
”データクリーニング”というサービスが
世の中に存在していることを教えてあげる。

私の場合は、半年以上前、人と話しているときに聞いた、
AirPodsって今のところ白しかないんだけど、
カラーリングしてくれるサービスがあるらしいよ、という言葉を、
覚えるともなしに覚えていたことが、
”きっかけ”を作ったのだと思います。

ただし、売らんかな、買わせんかな、と煽ることはせず、
「そういうことも出来るから頭の片隅に置いておいて、
本当に困ったな、と思ったときには思い出して」くらいの
態度のほうが、私は良いのではないかと思っています。
「企業は『こう言いさえすれば、お前たちは焦って動くでしょ』と
思っている」と不信感を抱かせてしまえば、
良質かつ中長期的なコミュニケーションを築くことは
出来なくなってしまいます。
消費者を侮らないことが、肝要じゃないかなと考えます。

 

TV離れ、という言葉に代表されるように、
マスメディアを見ている人は減っているのかもしれません。
けれども、厳しい選考の合間合間で、マスメディアでの露出が
どこかには貢献しているんじゃないかなぁとは思います。
もちろん、マスメディア以外のSNSや広告や販路やらも。

信頼するに足る確かなファクトを収集することや、
生活している人の暮らしを徹底的に想像して、
その人たちが必要としているものを丹念に見つけること、
どうやったら、負担なく、求めている状態にたどり着けるか考えること。

誰かの
「ほしいもの」
に、ことばや輪郭と与えて、

「ほしいもの」
を手に入れてもらえるような、
”選考”の判断材料を提供できたらいいんじゃないかな、と思います。


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