個人益と社会益


パブリックグッド代表の菅原です。

私たちが前職でお手伝いしたプロジェクトに
LED電球の導入期のコミュニケーションがあります。
カンヌにも出品された、今でも印象に残っている仕事のひとつです。

LED電球というのは、ご存知の方も多いかもしれませんが、
二酸化炭素を一切排出しないので、CO2削減に非常に効果的な家電です。

細かな数値は覚えていませんが、
例えば、家庭の白熱電球をLED電球に変えるだけでこれだけのCO2削減が、とか
世界の中には、まだ松明などで灯りをとっている地域があるので、
そこがLEDに変えたらこれだけのCO2削減が見込めるとか、
そういった試算をして、プロモーションを展開した記憶があります。

結論から申し上げますと、こういった社会益を中心としたプロモーションは
PR的には一定の成果を上げましたが、購買にはあまり結びつきませんでした。

そりゃそうだ、と思うのです。

今でこそ一般化しましたが、当時、LED電球なんて誰も知りませんでしたし、
だいいち、値段がものすごい高い。
確か、普通の白熱電球が1個100円とか200円とかの価格に対して、
LED電球は1個数千円とか、あり得ない高額商品だったのです。

どんなに環境に良いと謳っても、何十倍の値段のものなど、買うはずがありません。
ところが、現場にいるときには、どうにも釈然としない思いを抱いておりました。
ましてPR的には大成功を収めていたものですから、ある種の義憤に駆られていたのだと思います。

ものすごい乱暴に言うなら、ソーシャルマーケティングは
こういった視点に陥りがちです。

公共性、社会性の高いものは値段もちょっと高い。
お客様はそこに共感して買ってくださっている。
プランナーも商品設計者も、どこか甘えがあると私は思います。

有機野菜でも、エシカルコスメでも、少し高価格であること自体が
自己表現ベネフィットにつながっているうちはいいのですが、
機能ベネフィットや情緒ベネフィットに付加を付けられなければ、早晩廃れます。
要は他で代替が利くからです。

LEDも、電気代が白熱電球の8分の1だったり、
白熱電球の寿命1,000時間に対してLEDは40,000時間だったり、
直接的な個人益につながるベネフィットを打ち出す方向に修正してから一気に一般化しました。
(現に私も、CO2削減試算結果は忘れてしまいましたが、
電気代や寿命の数値は今でも覚えています)

ハイブリットカーだって、環境に優しいけれど燃費が異常に悪かったら
きっとここまで売れていません。

前職の尊敬する副社長がかつて
「マーケティングコミュニケーションの基本は、笑いと涙と損得勘定や」って言っていました。
その通りだと思います。

どんなに感動するストーリーがあっても、
買ってくださるお客様の便益が最大化されなければ、それは売れません。

LED電球でもハイブリットカーでも、少し高いのはいずれペイするという打算がまずあって、
それに環境にも良いしね、という背中を押す設計ができてはじめて、
ソーシャルマーケティングとして成り立つのだと思います。

つまり、社会性が高いからと言って、マーケティング基本である
4Pの最適化を怠っていいわけではないのです。
有機野菜なら、他の野菜にない差別性や競合優位性が有機農法と紐づいていないといけない。
エシカルコスメもエシカルであることがお客様にどんな便益をもたらすか語れないといけない。

お客様は化粧品に対価を支払っているのであって、
フェアトレードや女性の社会参画推進に対価を支払っているわけではない。
ドネーション的プログラムが限界を迎え、
本当の意味で仕組みを生み出すソーシャルマーケティングが求められていると思う所以です。


パブログTOPへ 全体のTOPへ