Vol.2「ゴールドラッシュで金を掘ったヤツに金持ちはいない!」|漫画「インベスターZ」連載企画


漫画「インベスターZ」からビジネススキルについて学ぶblog連載、本記事のテーマは「成功する事業とは」です。今回取り上げるコマは、文脈をご理解いただくために若干長めですが、ぜひご覧ください。

※いきなりこのページにいらした方は、この連載企画の趣旨をご参照ください。


シーン(1)「金を掘ったヤツに金持ちはいない!」

※道塾学園投資部主将・神代圭介の発言。学業優秀者が集まる道塾にあってさらに「10年に1人の天才」と言われている

 

 

 

 

 

 

 

「インベスターZ」2巻より ©三田紀房/コルク

主人公・財前孝史がいきなり100億円の資金を預けられ、彼なりに投資先として「良い株」を探そうとしている時、投資部主将の神代がアメリカのゴールドラッシュを引き合いに出し放った一言。「良い株を探すとは金を掘りに行く奴と同じ」という示唆。どうでもいいが、作品初期は、神代の顔がいちいち怖い


シーン(2)「つまり商売というのはマーケット管理なんだよ」

※喫茶店の老店主の発言。50年間、地元で古き良き喫茶店を経営してきた。藤田家の長女美雪の友人で久保田さくらの母親(バツイチ、貧乏)に自分が経営してきた喫茶店を任せたいと思っている

 

 

 

 

 

 

 

「インベスターZ」11巻より ©三田紀房/コルク

道塾創業家・藤田家の長女美雪の友人・久保田さくら。彼女の母親(バツイチ、貧乏)が古い居ぬきの喫茶店を任されるチャンスに出会うが、さくらはあまり客の入っているようには見えない店が心配になり老店主に問うた時の回答


シーン(3)「企業が起こす革命には二つの種類がある。それは動と静だ」

※道塾学園投資部で主人公財前の先輩・安ヶ平慎也の発言。気づけば部室に消臭芳香剤を散布するほどのキレイ好きである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インベスターZ」3巻より ©三田紀房/コルク

主人公の財前孝史が何気なく立ち寄ったセブンイレブンで投資部の先輩・安ケ平にたまたま出会い、セブンイレブンの革新性を解説される場面


●事業とは顧客に何かを提供して対価を得る活動

今回のテーマは「成功する事業とは」です。「インベスターZ」は投資が題材の漫画なので、投資先選定の際、成功する企業の見極めポイントの話が幾度となく出てきます。作中ではあくまで「投資先選定の基準」として登場しますが、今回はそのポイントから私たち自身が携わる事業や会社の成功のヒントを(勝手に)読み解き、日々の業務に生かしていきたいと思います。

 

「事業の成功」を考えるにあたって、ここでは「事業」を「商品・サービスを顧客に提供して収益を得る活動」と定義します。会社はこれらの事業を生み出し収益を上げる「集合体」、事業の成功とは「適切な収益を上げ続けること」とそれぞれ規定しておきましょう。

 

事業とは基本的にはとてもシンプルです。顧客に何かを提供してお金をもらう活動で、それ以上でも以下でもありません。これは町のラーメン屋でも世界的大企業のトヨタでも同じです。で、そこで売っている「何か」とは何なのかと言えば、私は大きく「困りごとの解決」と「欲望の充足」のふたつに分けられると考えていますが、この話題は長くなるうえに本論とはあまり関係ないので、このコラムでは詳しくは触れません。別の機会に書こうと思います。

 

●現代のゴールドラッシュ「インスタ映え」に見る事業の成功

さて、上のシーン(1)、現代のゴールドラッシュとも呼べる現象が去年、一昨年あたりから見られています。「インスタ映え」というブームです。ゴールドラッシュと同じく、「インスタ映え」するという目的で写真を撮った人で金持ちになった(事業的成功を収めた)人はおらず、「インスタ映えしたい」という顧客の欲求を充足してくれるサービスを提供した事業が成功を収めています。インフラとなったInstagramをはじめ、上手にセルフィーが撮れる機器や写真の加工アプリ、インスタ映えするスポットの提供や、外国人モデルとあたかも友達であるかのように振舞って一緒に写真を撮ってくれるサービスまで提供され、事業的成功を収めています。

 

事業の成功とは、この「インスタ映え」に見られるように、世の中に眠っている「解決されていない困りごと」や「充足されない欲望」を適切に捉え商品やサービスを開発して提供するということに尽きるのですが、それと同じくらい重要なのがシーン(2)で喫茶店の老店主の指摘する「マーケット管理」にあります。

 

●忘れがちな「既存顧客」

私たちマーケッターは何かを仕掛けるとき、割と無意識に毎回「新規顧客の新規購買」を獲得する戦略を考えがちですが、マーケット管理の視点では、「既存顧客の継続購買をどう増やすか」や「休眠顧客の復活購買をどう促すか」も「新規顧客の新規購買」と同レベルで検討すべきと考えます。

 

ものすごく単純化した例をひとつ。

 

あなたは1,000円の消費財を1,000万円売るというマーケティング目標をもったプロジェクトの担当者だと仮定しましょう。このプロジェクトの場合、以下のようなシミュレーションが成り立ちます。

 

・新規:1年間で1回買ってくれる新規購買の場合、目標達成に必要な顧客数は10,000人

・常連:1年間で毎月買ってくれる継続購買の場合、目標達成に必要な顧客数は833人

 

実際はもちろんこんなに単純ではありませんが、新規顧客に新規購買で10,000人に買ってもらうのと、既存顧客に継続購買で833人に買ってもらうのでは、難易度が違ってきます。マーケット管理、特に既存顧客、いわゆる常連さんとの関係作りもいかに大切か、イメージがつくかと思います。

実は当社も、創業当初から今まで、ずっと良い関係で長くお付き合いさせていただいている継続のお客様が少なくありません(ひとえにお客様の懐深さのおかげです)。当社が成功しているかどうかはともかく、このことは、より良いサービスを提供することにしっかりと注力できる環境づくりのひとつの要因にはなっていると思います。

 

●セブンイレブンの「静の革命」

シーン(3)では、常連さんとの関係作りから事業的成功を継続するセブンイレブンが紹介されていますが、「マーケット管理」や「静の革命」に重要なのは「この常連さんが常連になった理由」を解き明かす点にあります。

 

いまの常連さんもかつてはたくさんいた「新規顧客 10,000人」の一人だったわけです。その方々が後に「毎月購入する833人」になってくださるわけで、そうなったのには当然理由があります。それを解明し「常連さんになってもらうための仕掛け」を自社のバリューチェーンに組み込むこと、一定期間反応を見てその修正を繰り返すことが成功への近道であり、実はマーケッターの醍醐味であると考えます。

 

ちなみに、当社で仕掛けるPRプロジェクトで私が最も重視し社内でも徹底しているのが、「露出を決めきれるメディア力」でも「斬新なコンテンツ開発力」でも「精緻なプランニング力」でもなく、施策実施後の「レビュー力」です。

 

レビューでは「目標」に対して「到達点」と「課題点」のふたつの観点で言語化し、可能であれば定量化し、分析します。例えば、メディア露出のレビューであれば、獲れたメディアと獲れなかったメディアがあります。獲れたメディアを上の「常連さん」に見立て、何が良かったのか、それを獲れなかったものに応用するには何が必要か、分析することで、次回はより精度の高いPRにつなげていきます。

 

マーケティング施策にせよ、PR施策にせよ、iPhoneやLINEのような「動の革命」は鮮烈ですし憧れもありますが、老店主の言う「マーケット管理」やセブンイレブンの「静の革命」のような、地味ながら成功には欠かせない施策の両輪が、事業の成功への第一歩ではないでしょうか。

 

●まとめ

・事業の成功とは世のなかに眠っている「解決されていない困りごと」や「充足されない欲望」を適切に捉え商品やサービスを開発して提供するということ

・それと同レベルで重要なのが、既存顧客・常連さんとの関係作りであるマーケット管理で、その方面で「静の革命」を起こしたのがセブンイレブン

・私たちマーケッターは「新規顧客の新規購買」を獲得する戦略だけを考えがち

・常連さんが常連になった理由を解き明かし、自社バリューチェーンに組み込み、反応を見ながら修正を繰り返すことが成功への近道

・当社で仕掛けるPRプロジェクトで最も重視ているのはレビュー力。各プロジェクトでの「常連さん」を見出し、常に改善を繰り返す


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