アスリートのキャリア形成を考える(4)


アスリートのキャリア形成を考える(4)

 

去る12月8日、青山学院大学で開催された「アスリートのキャリアについて考える」(主催:青山ビジネススクール、富士通株式会社)に参加し、自分なりに感じたこと、考えてきたことを書き連ねています。シリーズ(1)はこちら、シリーズ(2)はこちら、シリーズ(3)はこちらからご覧ください。

 

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●夢を与えるトップアスリート、他の夢の選択肢を知らせるべき周りの大人たち

先に挙げた齋藤選手のように、現役の超トップアスリートが「自分が夢や憧れにならなければならない」というスタンスで競技に臨むことは、次世代の育成という観点でも非常に重要です。このコラムのテーマであるアスリートのキャリア形成はむしろ、周りの大人たちの担うべき課題なように思いますが、指導者やコーチに、その役割も担ってもらうには、中長期的には不可欠ですが、子どもの数が減り、スポーツの実績がそのまま学校の生徒獲得にダイレクトに影響する状況を考えると、短期的にはハードルが多いように感じます。

 

しかも、現役プレイヤーが、プレイヤー以外の将来の可能性を考慮に入れるなど言語道断、といった風潮が、未だに残っているようにも感じられてなりません。特に指導者は「一途性(いちずせい。私の造語です)」を何よりも重視します。他のことには目もくれず、ただひたすらにその競技にだけ集中すること、生きている限り、身の回りの全ては競技の肥やしである、極端にいうと、そんな考えが大勢を占めています。更に、そういった一途性とスポーツパフォーマンスには相関があるように考えている節があり、他のことを考えたり、まして自分が現役じゃなくなった後のことを考えると、負けたり記録が伸びなくなるので、目の前の競技、練習、競争相手に集中すべし、といった価値観が根強いように思います。

 

●私の周りには諫める大人がいた

私はバスケットボールが大好きですし、今でもやっていますが、上に行く能力はなかったのだと思います。それは技術面だけではなく、身体性にも及んでいたと感じます。一般生活では大きな体ですが、バスケ界ではそれほど大きなほうではありません。体の大きさだけではなく、体幹や体の柔軟性といった身体の機能性にも課題がありましたし、それをトレーニングで解消する努力もしていませんでした。怪我もたくさんしました。当時の自分としてはベストを尽くしていたつもりですが、大人になった今となれば、上に行くレベルではなかったことが、よく理解できます。

 

ですが、当時の自分には、そういった現状を正当に評価できる視点がありませんでした。恋は盲目と同じく、可能性は盲目です。可能性に満ち満ちた私は、「その可能性に賭ける一択」で勝負しようとしていたのです。そしてそんなとき、優しく、時に厳しく諫めてくれる大人が私の周りにいた、ということに改めて気づくのです。両親は「夢みでーなこどほざぐんでねー(夢みたいなことを言うもんじゃない)」と半ば呆れながら諫め、中学の担任は「こんな選択肢もある」と親身になって別な進路を提案してくれ、高校のC監督は「お前には才能がない」と一刀両断してくれました。

 

夢を見るのは自由だし、可能性は無限大だと私も思います。ですが、可能性一択は、現状認識力に乏しい10代一人に負わせるのはとても酷だと感じます。可能性は無限大だからこそ、プレイヤー以外の可能性も学生アスリートたちは知るべきですし、大人たちは伝えるべきです。

 

●NPO法人の活動という選択肢

かといって、現役のアスリートでも、指導者でも、教員でもなく、そもそも、そんなことを言うほどのアスリートとしての実績もない、サラリーマンだった私に何かできることがあるようには思えず、今は今で小さな会社の経営者ですが、これをビジネスにするような発想もアイデアもいまいちぴんと来ず、結局、20年以上、ずっと気になったまま過ごすことになるのです。

※ビジネスは基本的にメリット享受者から対価をもらう活動ですが、その理屈でいうと、学生たちから対価をもらわなければならず、どうもぴんと来ません。

 

従って、これをNPOの活動としたShape the Dreamの方々の先見性には感服するばかりで、学校へ出向きワークショップをするプログラムも、分かりやすさの観点から効果的と思います。そして、こういった課題がある、その解決策としてこういった取り組みをしているということを、教室で子どもたちに知らせるのも、メディアを通じて世の中に知らせるのも、いずれも私たちPRパーソンの責務ではないかと感じましたし、私のように「何かしたいが、できることが見つからない」と悶々と過ごしている、あの青学の教室を埋め尽くした身体の大きな200人にも、希望を与えると考えます。

 

フォーラム後、白木さんとやり取りをさせていただき、こうして自分の原体験を言語化する機会をいただきました。改めてこの場を借りて感謝申し上げます。年明け、Shape the Dreamのワークショップを見学に行かせていただくことになりそうですので、またこの場でレポートします。


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