Vol.1『優秀な人間が相談して出した結論なんてロクなもんじゃない』|漫画「インベスターZ」連載企画


漫画「インベスターZ」からビジネススキルについて学ぶblog連載、今回のテーマは本連載の「はじめに」 で取り上げた「会議」についてです。


シーン(1)「優秀な人間が相談して出した結論なんてロクなもんじゃないんだよ」

※道塾学園投資部主将・神代圭介の発言。学業優秀者が集まる道塾にあってさらに「10年に1人の天才」と言われている

 

 

 

 

 

 

 

「インベスターZ」6巻より ©三田紀房/コルク

主人公・財前孝史は入学初日に訳も分からないまま投資部に引きずり込まれるが、先輩とのやり取りを経て投資の意義を理解するようになる。一方で、秘密裏に運営される投資部に対して疑問を持ちはじめ、こんな少数ではなく、「投資部」の存在をオープンにして優秀な学生をたくさん集めて投資を行ったほうが、より良い成果になるのではないかと主将の神代に提言し一蹴されるひとコマ。


シーン(2)「『みんなの意見』は責任を恐れる人間には甘美な誘惑となるが、そこからは陳腐で平凡なものしか生まれない」

※麻生元首相の甥・麻生巌の発言。道塾学園創業家の藤田家の跡継ぎである慎司(高校3年生)に、地方の家督の先輩として帝王学を指南する

 

 

 

「インベスターZ」12巻より ©三田紀房/コルク

後に主人公の財前孝史と大きな対立を繰り広げることになる道塾学園創業家・藤田家の跡継ぎである慎司が、帝王学を学ぶためにある先輩経営者に教え受ける場面


シーン(3)「社長って判子を押す人!だけど一人でなんでも勝手に押せる権限はない。ほかの取締役たちに『押していい?』『押すよ!』と確認を取って押す人のこと

※道塾学園創業家の藤田家・美雪、慎司の母の発言。

 

 

 

 

 

 

「インベスターZ」13巻より ©三田紀房/コルク

道塾学園創業家・藤田家の長女・美雪(慎司の妹)が、画商で奔放なママから「社長とは何か」を教えられる場面


●会議とは「ものを決める場」であるという原則を忘れない 

上で紹介したシーンのように、「会議」はしばしば批判の対象になっています。優秀な人間が相談して決めた結論はロクなもんじゃなく、みんなの意見からは陳腐で平凡なものしか生まれず、社長は他の役員に確認を取って判子を押す人とは、ずいぶんな言われようです。

なぜ会議がこうした揶揄の対象になってしまうのか分析しつつ、当社で実践している改善方法をご紹介したいと思います。

社会人であれば誰しも、毎日それなりの時間を「会議」に費やしていますが、そもそも「会議」とは何のためにやっているのでしょうか?端的に言えばそれは「ものを決めるため」と定義することができます。

「いや、そんなことないだろ。アイデアを出す会議や何かを報告する会議だってあるのだから、全てがものを決める会議というわけではないだろう」という意見もあるでしょう。確かにそうなのですが、アイデア会議では、最終的にはたくさん出たアイデアのどれを採用するか「決める」わけですし、報告を受ける会議ではその報告をもとに次のアクションを「決める」わけですから、突き詰めると会議はものを決めるために行うと言って差し支えないと考えます。

 

●仕事とは「ものを決める」ことの連続だが、それは苦痛以外の何物でもない

会議に限らず、仕事には、というか人生には常に「ものを決めること」がついて回ります。会社をどうしていくか、どんな商品を開発するかといった大きなテーマから、このプロジェクトはだれが担当するのか、イベント会場をどこにするか、お客さんに送るメールの最初の文章を何にするか、今日は何を着ていくか、昼に何を食べるかといった日常的なことに至るまで、規模の大小や意識的・無意識的を問わず、ものを決めることの連続です。そして私たち人間は基本的に「ものを決める」のが嫌いです。

運動すると筋肉に負荷がかかって疲労するように、ものを決めると脳に大きな負荷がかかり疲労します。健康に良いと分かっていながらジョギングしないのと同じで、必要と分かっていながらものを決めないのは、自分に負荷のかかることを避けようとする人間の性とも言えます。有名な話ですが、Appleのスティーブ・ジョブズやFacebookのマーク・ザッカーバーグが同じ服しか着なかったり、一流のアスリートがシーズン中、起床から試合までのルーティンを崩さなかったりするのは、彼らの持つ大きな目的達成以外の意思決定で脳に負荷をかけないようにするためです。

しばしば指摘される会議の問題点がなかなか改善されないのは、こうした「ものを決めたくない人間の性」や「会議とはものを決めるために開催する」という共通認識の不足がありますが、それ以上に「そもそも、ものを決めるために必要な要素」が明確になっていないところに原因があるように感じます。


●ものを決めるために必要な3つの要素

ものを決めるのには①目的、②結論、③結論の根拠の3点が必要です。例として、私のある日のランチを見てみましょう。

① 目的:急いで空腹を満たしたい

② 結論:立ち食いそば屋Xに行ってランチを食べる

③ 結論の根拠:

(ア) 立ち食いそば屋Xは料理が出てくるのが早く、しかも量も多いので満足感を得られやすいから

(イ)私はいま500円しか持っておらず、その金額で食べられる範囲にしないといけないから

これが私が導いた①目的、②結論、③結論の根拠です。


●良い会議とは、各分野の専門家が意見を持ち寄り高次な結論に達する場

この意見を踏まえ、友達が③の(イ)を見て、「会社近くの定食屋Yはボリューム満点の500円セットがあるし、出てくるのも早いよ」と②の結論の選択肢を増やしてくれました。おお、そうなのか、知らなかった。一方で妻は①を見て「最近食べ過ぎで健康診断の数値も悪いんだからランチ位抜いたら」と、いまの私の目的とは別の、何ならそれよりも上位な「健やかに生きる」という目的を提示してきました。まあ、そうですね、確かに、最近太ってきたし。。。

このように、複数人数が集まってものを決める会議とは、あるメンバーのある事柄に対する①②③について、自分以外の人間の様々な視点から検証を行い、より高次な②結論を導くために開催されるべきだと考えます。できれば、会議の参加メンバーがそれぞれの専門の立場で事前に①②③を考え持ち寄り、討議できるとより良い会議になります。

が、いつの間にか、シーン(2)にあるように、「みんなで決めた」ということを建前に、より高次な結論に至るという目的よりも、ひとりでものを決める場合の負荷軽減に重きが置かれるようになりました。見事なまでの主従の逆転が見て取れます。シーン(1)で神代が指摘する「ロクな結論にならん」というのは、こうした主従の逆転が起こり得ることを見越した発言なのでしょう。

 

●ものを決めるためのパブリックグッドの工夫

今回紹介したシーンで揶揄的に描かれているように、こうした会議の問題点はこれまでもしばしば指摘されてきましたが、人間の負荷を避けたいという習性とも相まって劇的に改善されたとは言い難いと感じます。ものを決めることは大変です。当社でも試行錯誤の連続ではありますが、当社なりの改善への取り組みを4つご紹介します。

(1) オーナー制度
当社では会議に限らず、請け負っているプロジェクトに必ず「オーナー」が任命されます。オーナーは必ずしも役職者や年長者が就くものではなく、プロジェクトの目的を踏まえて決めます。そのオーナーはプロジェクトの全決定権と全責任を持ちます。プロジェクトに関しては代表の私よりも意思決定権は上です。会議を招集する場合も、agendaの設定から進行、最終的な意思決定までその人間が担うことになります。このように組織上で最初にロールを決めておくというのはものを決める際、非常に有効だと考えます

(2)会議の 参加者を厳選する
上で整理した①②③を持ってこなかったり、発言しなかったりする人間は会議に呼ばないようにします。冷たい対応のようですが、貴重な時間を無為に過ごすよりはオーナーにとっても参加者にとっても良い結果につながります

(3) 会議をなくす

会社を立ち上げてから5年目になりますが、少なくとも起業前に比べて社内会議に費やす時間は格段に減りました。定例のMTGは週1回だけです。社内会議に使う時間をお客様やメディアとのやり取りに使ったほうがバリューが発揮できて有意義です。少なくとも、会議とはものを決めるためのものという前提のもとでは、ものが決まらない会議や実はすでに結論は決まっていて便宜上、みんなの前で承認をとるための会議はやめてしまっても何のデメリットもないと考えます

(4) YES/NO習慣を風土として定着させる

実は意外に奏功する取り組みです。当社では情報発信者は情報受信者が「YESかNO」で答えられる投げかけをしようというルールに近い風土があります。これは会議に限らず、多くの社内コミュニケーションで浸透しています(と私は信じています)。

例えば、誰かと一緒に外出する予定が入っているとき「何時に出ますか?」と聞くのではなく、「11時の電車に乗りたいので、会社を10時50分に出ますが良いですか?」と投げかるようにしよう、というものです。この時、「11時の電車に乗りたい」と聞いた人間は、同行する人間のスケジュールを確認し、行き先を検索して、地図で調べて、「11時の電車に乗る」と決めて発言したわけです。彼はYES/NO習慣があることで、「考える」という1クッションを必ず挟むことになります。そして、情報を受けた人は、無数にある選択肢の中からものを決めて返答するのではなくYESかNOかのいずれかを選べば良いわけですから、負荷軽減にもつながります。

 

●エージェンシーの役割

私たちPRエージェンシーは、「ものを決める」ことからは逃れられません。中には、エージェンシーであることを傘に、「最終意思決定はクライアント」というスタンスの人や会社もあります。ある部分では正しいとは思いますが、ここまで見てきたように、クライアントにとって「ものを決めること」「会議で合意形成を図ること」の大変さを考えれば、できるだけその負荷を軽減することもエージェンシーの役割だと考えます。

昔、いたんですよね、「ネタがないから露出がとれません。何かありますか?」ってクライアントに平然と言い放つPRパーソン。さすがに最近はいないと思いますが、少なくとも「ネタがないから露出がとれません。●●をやりませんか?」って提案差し上げるのが筋だと思うんですよね。

先に、ものを決めることは、運動が筋肉に負荷をかけるのと同様、脳に負荷をかけることと説明しましたが、逆に見れば、習慣化した運動によって鍛えられた筋肉ほど強いものはありません。ものを決めることを習慣化した脳も同様のことが言えます。複数人数による集合の場が会議であるなら、その参加者ひとりひとりの「ものを決める」力を向上させることが、結局は改善の近道になります。

 

●まとめ:神代に「ロクな結論じゃない」と言われないために

・会議は「ものを決める場」であることの認識徹底。「ものを決めない」会議は開催の必要なし

・ものを決めるために必要な3点セットは①目的、②結論、③結論の根拠

・オーナーが考えてきた①②③を、それぞれの意見を参照しながら、より高次な結論に導いていく

・オーナー制度、YES/NOルールなどでものを決める習慣を風土化


Vol.2「ゴールドラッシュで金を掘ったヤツに金持ちはいない!」


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