ギャングと屋上遊園地|映画の対位法から得る発想のヒント


国内最後の”屋上遊園地”、丸広デパートの”わんぱくランドが
昨日2019年9月1日をもって閉園しました。

NHK『おはよう日本』、TBS『ビビット』、日本テレビ『スッキリ!』、
テレビ朝日『グッド!モーニング』をはじめ、多数のメディアでも報じられました。

丸広百貨店川越店の屋上遊園地「わんぱくランド」が51年の歴史に幕、別れを惜しむ客が多数来場

1968年に創業した丸広百貨店川越店の屋上遊園地「 丸広百貨店わんぱくランド 」が、9月1日をもって閉園する。閉園前日となる8月31日の今日、開園前から行列ができるなど多くの来場者で賑わいを見せている。 …

是非、様々な報道写真を見ていただきたいのですが、
あらん限りの楽しい記憶だけをしまい込んで
そのままゆっくりと日に褪せたような、
屋上遊園地のノスタルジックなデザインには、
心を掻き立てられるものがあります。

カートゥーン調の顔のテントウ虫の形をした2人乗りモノレールが屋上を周回し、
空中に浮かぶメリーゴーランドには、馬ではなく、
イタリアのマッキ社が作ったような形の色とりどりの飛行艇があしらわれ、
目線を上に見遣ると、真ん中に大きく伸び伸びとガーベラの花が描かれた
小型の観覧車が空を横切っては降りて…。

縦に横に、「心を弾ませる」というたった一つの目的のためだけに
複雑に組まれた構造物が作る暗がりと、
そこから視界が開けたときに広がる景色に、
全盛期当時の子どもはどれだけ胸が膨らんだか想像に難くありません。

 

 

さて、その屋上遊園地をロケ地として使った映画作品に、
『東京暗黒街・竹の家』という作品があります。
終戦からわずか10年後の1955年(昭和30年)に、
東京・浅草松屋デパートの屋上で撮影されました。
ヒロインは李香蘭こと山口淑子、監督はノワール映画の鬼才、サミュエル・フラー。

クライマックスの、屋上遊園地での銃撃戦シーンは鮮烈です。
艶やかなよそ行きの晴れ着を着た大人と、
色とりどりの風船を手にした日本人の子どもたちでごった返す屋上で、
ピストルを構えたアメリカ人ギャングが、
水平観覧車を器用によけながらターゲットを射殺せんと動き回る。
これを名場面と言わずして何と言いましょう!

丸広デパートの遊園地閉園を耳にして、
本作の「屋上遊園地と犯罪映画」という組み合わせに
心底しびれたことを、ふと思い出しました。

 

 

相反するイメージの情景や音楽をわざと組み合わせて、
そのシーンを印象づけることを、「対位法」というそうです。

たとえば、黒澤明の『野良犬』(1949)において、
三船敏郎扮する刑事と犯人が対峙する、
緊張感に満ちた場面で、よりによって
童謡『ちょうちょ』のピアノが流れるシーンであったり。

キューブリックの『時計じかけのオレンジ』(1972)で、
主人公アレックスが作家夫妻を襲撃する際に、
『雨に唄えば』を口ずさむシーンであったり。

 

 

私たちの仕事は、映画や演劇を作ることではないので、
それをそのまま仕事に取り入れることはできません。
ただ、コミュニケーションにおける「対」を考えて、
企画の発想をすることが時々あります。

この商品を使う人として、一見、最もふさわしくない人はどんな人か。
この商品が、いかにも役に立ちそうにない場面はどこか。
このイベントの講師に、いかにも適した人でなく、最も”らしくない”人は誰か。
このメッセージを伝えるために、絶対に言わないことは何か。
この堅苦しい案件の普及に、ばかばかしいことを絡めてなにかできないか──。

あまりバシっと嵌まる例がすぐに思いつかないのですが、
・成功者でなく失敗者が講師になるという『しくじり先生』(テレビ朝日)
・若者の著名人に「選挙に行こう!」と言わせるのでなく、
高齢者を起用した動画『Dear young people, “Don’t Vote”(若者よ、投票しないで)』、
・悲惨な事故映像を見せるのでなく「絶対に死なない人類」の模型を
展示することで交通事故を啓発する『Meet Graham』 などに
“対位法っぽさ”を感じます。

 

 

単に奇をてらうだけでは、情報を届けたい相手に不誠実ですし、
また、お客さんの要望に合わなければ、ただの自己満足です。

ただ、その自覚は持ちつつも、
いつか屋上遊園地とギャングのように、
痛快でウィットに富んでいて、印象的なPRプランが作れたらいいなと思っています。

 

 

◇余談:
「不謹慎なジョーク×葬式」が心を打つ動画
https://www.nicovideo.jp/watch/sm9650568

「コメディ界のビートルズ」と称される、
イギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」の
メンバーのひとり、グレアム・チャップマンの葬儀で、
彼の盟友のジョン・クリースが読んだ弔辞が、
ブラックユーモアに満ちていて、捧腹絶倒の仕上がりになっています。

この「不謹慎なお葬式」は、かえって、
生前の故人とのつながりの強さを感じさせる、
これ以上ないほど温かい追悼で、まじで泣けるし笑えるので、
モンティ・パイソン良く知らない人も是非見てみて下さい。


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